深い学びに誘う真正の文脈

公開日: 2017年10月22日日曜日

深い学びに誘う真正の文脈
研究部長  宮原 大輔
1 子どもとともに創る真正の文脈
 新学習指導要領の改定に伴い、「資質・能力の育成」「主体的・対話的で深い学び」など、新しい言葉を次々と目にします。これまでの、教師が子どもに知識を教え授ける知識伝達型の学習では、限界がきていることの表れではないでしょうか。なぜなら、このような学習で獲得した知識・技能は、日常の文脈と切り離されているために、新たに出会う問題状況に対峙したとき、どこでどのように使えばいいのかが分からず、結局宝の持ち腐れとなってしまうからです。だからこそ、できるだけ日常に近い本物の文脈の中において、教師と子どもが協働して知を構成していくプロセスを作り上げる学習へと転換していかなければなりません。このような文脈の中で学んだ知識・技能は本物となり、これから出会う問題状況に対しても、柔軟に対応できる生きて働く力になると考えます。
 そこで、わたしたちは、単元全体を通して子どもたちが課題と正面から向き合い、知識・技能を総動員して課題を解決していくような真正の文脈をいかにして創り出すかということについて研究を進めています。

2 教師の教えたいことから子どもの学びたいものに
 真正の文脈をつくっていく上でわたしたちが大切にしていることは、教材研究と子どもの見取りを両輪で行なうことです。教材研究を行う中で、教科の本質に迫るためにどのようなプロセスを辿らせていくといいのかということを考え、単元を構想していきます。そして、子どもたちからどのような問いが立ち上がるのか、それをどうつないでいくのかを想定することも欠かせません。
 実際に授業を行う際に、「子どもが課題について思うようにのってこない」と感じたことはないでしょうか。これは、子どもの見取りが不十分だったことから教師の思いと子どもの思いにずれが生じ、子どもにとって追究しがいのある課題となり得ていないことが原因だと考えられます。子どもは何を解決したいと思っているのか、何につまずいているのかという子どもの見取りを丁寧に行っていき、子どもの思考の流れを大事にしながら、単元を柔軟に修正していくことが大切です。そして、子どもにとって追究しがいのある課題とするために、例えば子どもの素朴概念では説明できないような事象を提示し、目の前の事象とのずれから生じる「なぜそうなるの」「何とかして解決したい」という切実な思いをもたせることが必要です。このように、教師の教えたいことから子どもの学びたいものにすることにより、自分たちが追究したい課題となるのです。

3 深い学びへ誘うために
 子どもにとって追究しがいのある課題でなければ、対話も生じません。私たちが考える「対話」とは、「互いの意見を受け入れながら、折り合いをつけていくことで、新たな知識体系を再構築していく創造的な活動」と捉えています。課題を解決していく中で、子どものつぶやきや矛盾する考えに立ち止まらせることが学びの深まりには欠かせないことだと考えます。そのためには、わたしたち教師が子どもの「ことば」を丁寧に見取り、一人一人の「論理」を明らかにしていくことが必要です。そうすることで、豊かなかかわり合いが生まれ「なるほどそうだったのか」と腑に落ちたり、「自分にはその見方はなかったな」と見えていなかったものが見えるようになったりする、まさに深い学びとなるのです。主体的で対話的な学びが生じるような真正の文脈をつくっていくことで、このような深い学びを実現できると考えます。
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A

0 件のコメント :

コメントを投稿